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「ジブリパークを歩いて」Vol.23は造園家・涌井史郎さん

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この場所を出発点にして
地球への思いを日常に広げる

ジブリパークのある愛・地球博記念公園を巡った涌井史郎さん

2005年の愛知万博で会場演出総合プロデューサーを務めた造園家の涌井史郎さんが、開園から20年を迎えた愛・地球博記念公園を訪れました。

万博の理念を受け継ぐこの公園と、その中に生まれたジブリパーク。
造園家の視点から、公園という場所の意味と、ジブリパークがここにある意義を語りました。

愛知の市民が示した
環境への高い意識

愛・地球博は初めて「環境」を真正面から掲げた万博でした。
当初は瀬戸が主会場となる計画でしたが、自然保護を訴える市民の声で見直され、長久手(現在の愛・地球博記念公園)に変更となりました。

私が万博に関わったのはまさにその頃で、名古屋の藤前干潟をごみの最終処分場にする計画を市民の力で撤回させた出来事を思い出しました。
暮らしのごみを減らし、広大な干潟と生き物を自分たちの手で次の世代へ引き継いだのです。

万博の長い歴史を振り返ると、最初は国の威光を見せる場で、やがて企業が自社をアピールする場に姿を変えました。
そんな中、世界初の環境万博が愛知で実現したのは、こうした土地に根付いた市民の高い環境意識があったから。
愛知・名古屋は世界から見れば環境の先進地です。
地球環境問題への関心が市民レベルにまで浸透していることをぜひもう一度思い起こしてほしいです。

公園の景観に溶け込んだ「もののけの里」の風景を眺める

公園のジブリパーク化に
当初抱いた抵抗感

公園とは非常に多目的な存在です。
砂場やすべり台などを楽しむ子どもから、文化活動の拠点とする大人まで、誰もが社会的なインフラとして、ウェルビーイングな暮らしをお金をかけずに実践できる。
これが「利用効用」。

それだけではなく、公園の緑は多くの生き物をはぐくみ、夏には都市に冷気を送り、災害の時には避難の場にもなる。
こうした「存在効用」も、公園は同時に備えている。
市民生活になくてはならない場所なんです。

だからこそ、ここがジブリパークになると聞いた時は、非常に抵抗を感じました。
国が残した大切な資産であり、お金がなければ入れない場所にしてはいけない、と。

でも、ジブリの方々はよく分かってくださった。
エリアごとに入場口を分け、無料のエリアでも楽しめて、外から眺めて「あれがハウルの城か。今度行ってみようね」と思える。
誰もが親しめる公園であり続けています。

そもそもジブリ作品が描くのは、究極の人と自然の関係。
自然を敬い、その魅力を伝え、どこか懐かしい風景で心を揺さぶる。

ジブリ作品で美しいと思うのは、空。
常に空があって、その下には緑がある。
これは愛・地球博のテーマ「自然の叡智」、自然があってこそ我々人類があるんだという思いと、まったく同じなんですね。

「愛・地球博記念館」の展示を見学しながら、万博当時を振り返る

宮崎吾朗監督は、公園や都市の緑化などを設計するランドスケープアーキテクトでもありその強みは特に「魔女の谷」あたりに顕著です。
「この植物がここにあれば、きれいに咲いて当たり前」というところまで考えて選び抜かれている。

万博当時からある「サツキとメイの家」(どんどこ森)も、自然と共に循環する暮らしを今に伝えてくれます。
「今がベストで昔は不便」ではなく、「こういう暮らしもいいな」と感じられる。
地球環境問題の手がかりまで示してくれる場所です。

ただ調和するだけでなく
戦わなければならない

『紅の豚』にしても『もののけ姫』にしても、ジブリ作品には何かとの戦いが描かれています。
自由や創造性を守るため、荒ぶる自然の原因を突き止めていさめるため、時には戦わなければならない。

私たちも、環境問題とうまく調和しようと考えるだけではダメなんです。
その戦い方や守るべきものをジブリは教えてくれる。

今の私たちは、未来の子どもたちの分まで使いすぎているのかもしれません。
ジブリ作品に触れ、自分の代ではこのくらいでやめておこう、次の世代の分がなくなってしまうから―
そんな考えが、公園の外でも展開されるといいですよね。

これからの地球は、みんなで力を合わせて守らなければなりません。
この場所を出発点に、ジブリパークと市民が手を携えて、その思いを暮らしの中へ広げていく。
そんな動きが出てくるとうれしいです。

「オキノ邸」(魔女の谷)の庭で植栽に感心する涌井さん

涌井史郎(造園家・「愛・地球博」会場演出総合プロデューサー)

1945年、神奈川県鎌倉市生まれ。造園家として、多摩田園都市などのみどりのまちづくり、宮古島リゾート計画やハウステンボスなどの多岐にわたる作品群を手がける。
2005年の愛・地球博では会場演出総合プロデューサーを務めた。現在は国際園芸博覧会『GREEN×EXPO 2027』の推進に力を注ぐ。

※掲載情報は2026年9月27日付です。展示等の最新情報はジブリパークウェブサイトをご確認ください。