インタビュー企画「ジブリパークを歩いて」Vol.14は菅原小春さんです。
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「現実ってこんなに素敵」って
ゆっくり歩いて感じてほしい
世界で活躍するダンサーの菅原小春さんが「どんどこ森」や「もののけの里」を巡りました。幼い頃からスタジオジブリ作品の大ファンで、表現者の視点を交え、ジブリパークの魅力を熱っぽく語りました。
どの作品からも感じる
「愛し合っていこうぜ」
ダンサーになったきっかけは小さい頃から音楽に囲まれて育ったこと。両親がテレビをつけなかったので、家ではいつも音楽が流れていました。お姉ちゃんは歌を歌い、私は踊る。それが日常でした。そんな私を見て両親が近所のお遊戯スクールに入れてくれました。
小学生になってからは自分で振り付けを作って、クラスの子に声をかけ、近所のイベントに出演していました。創作が好きで、自作自演するのが楽しくて、今はその延長線上にいるような感じです。
ジブリ作品も子どもの頃から見て育ちました。学校ではテレビの話題についていけず、家に帰ってお姉ちゃんとジブリのビデオを見まくっていましたね。もう私のDNAに入っています!
ジブリ作品って、良い作品を残しているというだけでなく、〝愛〞を感じるんです。どの作品も「愛し合っていこうぜ」って言ってくれている気がしていて、ダンサーとしても、いつもそういうところを目標のように感じています。
ハウルの城で踊り
表現の幅が広がる
2024年放送の音楽番組で「ハウルの城」(魔女の谷)で「人生のメリーゴーランド」に合わせてパフォーマンスをしました。視察から収録まで2週間くらいの準備期間でした。
『ハウルの動く城』の宮﨑駿監督や久石譲さんの音楽、そして、ジブリパークの宮崎吾朗監督が生み出した世界の中で踊るなんて、思考回路が追いつかなかった。正直まだ自分が未熟すぎて、「あと10年ください」という気持ちでした。
でも、「ハウルの城」という建物を主役に見立てて踊るというのは初めての経験で、表現の幅が広がる機会になりまた。
舞台「千と千尋の神隠し」でカオナシを演じた時は言葉だと「あ」しか言えないから、動きでどう表現するかいろいろ試行錯誤しました。
ダンサーがただお面をつけて踊っているようにならないよう、カオナシの孤独な気持ちになりきって、そこからこぼれてしまう思いを体で表現することに徹しました。
創作で困ったら、宮﨑駿監督や高畑勲監督のドキュメンタリーを見ます。創作している時って孤独で、宮﨑監督が「やめる、やめる」って言っているのを見ると、おこがましいですが、「それでいいんだな」と思えるんです。
孤独な作業の中でもチームでつくっていて、実はみんながいるんだという温かさに気づき、勇気をもらえます。
「歩くの最高!」
そう思わせる空間
ジブリパークを巡って感じたのは、とことん愛情がある人たちが作った場所だなということ。特に感動したのが「どんどこ堂」(どんどこ森)へ向かう道。みんなが息を切らしながら登っていて、テーマパークというより山に来たような感覚でした。
素敵な景色を見たいなら、山あり谷あり、砂利もあるし段差もある。それを一緒に楽しく体験しようという優しさと、いい意味での厳しさが寄り添っている感じがしました。
子どもの頃も大人になってからも、ジブリ作品から感じるのは自然と共存する素晴らしさ。人間はゴミもいっぱい出しちゃうけど、ちょうどいいところで自然と仲良くできるんじゃないか。それを見つけようよと、何回見ても教えてくれます。
ジブリパークはそれをまさに体感できる場所。「現実ってこんなに素敵だよ」と。
まだ来たことのない方は絶対来て!そして、感じてほしい。ここに来ると、「歩くの最高!」って思わせてくれます。
ゆっくりでいいから、前に進む。そんな素晴らしさを教えてくれます。家に帰っても、そういう気持ちが続いていたらいいなって思います。
菅原小春(ダンサー)
1992年、千葉県出身。幼少期に創作ダンスを始め、小中高生の時に数々の有名ダンスコンテストで優勝。2010年に渡米し、独自のダンススタイルが高く評価され、国内外で活躍するダンサーとして注目を集める。NHK大河ドラマ『いだてん』(19年)に出演し、女優としても活動の幅を広げている。舞台「千と千尋の神隠し」(22年)ではカオナシ役を務めた。
※掲載情報は2025年12月8日付です。展示等の最新情報はジブリパークウェブサイトをご確認ください。