インタビュー企画「ジブリパークを歩いて」Vol.13は角野隼斗さんです。
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作品の世界観に浸りながら
音楽を奏でる楽しさ

国内外で活躍するピアニストの角野隼斗さんが初めてジブリパークを巡り、幼い頃から慣れ親しんできたスタジオジブリ作品とその音楽の魅力を存分に語りました。「地球屋」と「ハウルの城」では実際にピアノ演奏もしました。
物語の中に入り込み
感慨深くピアノ演奏
ほとんどの作品を観ているので、ジブリパークは物語の中に入り込んだようで楽しかったです。「地球屋」(青春の丘)のバイオリン工房では音楽番組の収録で、「カントリー・ロード」を(俳優の)松下洸平さんとセッションしました。
僕がピアノを弾き、松下さんが歌う特別な時間でした。演奏している時、偶然、アンティークショップのからくり時計の音が聞こえてきたので、良い雰囲気になりました。

光栄なことに「ハウルの城」(魔女の谷)ではハウルのアトリエで「人生のメリーゴーランド」を弾かせていただき、感慨深かったです。ハウルの寝室はベッドの布団のめくれ方も生活感があふれていたし、細部にこだわりを感じましたね。
魔女の谷では夜の時間帯に収録を行ったので、月の明かりに照らされた幻想的なお城の姿も心に残っています。

久石譲さんらの音楽が
物語をより際立たせる
ジブリ作品で特に思い入れが深いのは『千と千尋の神隠し』。子どもの頃、家にあったDVDを繰り返し観たのを覚えています。劇中の後半、「ふたたび」が流れるシーンがグッときますね。
個人的にはカオナシに居場所が見つかって、銭婆の家で編み物をしているシーンも泣けるポイントの一つ。幼い頃の自分もなかなか話しかけられない性格で、どこかカオナシに共感する部分があったのかもしれません。
やはりジブリ作品において、音楽と映像は切り離せない関係ですよね。音楽を聴くと映像が鮮明に思い浮かびますし、物語の世界観が音楽によっていっそう際立つ。音楽家として、ジブリ作品を多く手掛けている久石譲さんからは多くを学んでいます。
映画音楽の世界でレジェンド的存在である久石さんは、ミニマル・ミュージック(※)というバックグラウンドを大切にしながら、現代のクラシック音楽の可能性を追求している方。和音の積み上げ方は日本的なものを感じさせ、〝ジブリっぽさ〞を構成する要素だと感じます。
ジブリに関連する楽曲で弾いていて特に楽しいのは『紅の豚』の「MADNESS」。裏拍子で始まって、弾いていくうちに表か裏か、リズムがわからなくなるようなトリッキーさが魅力です。
※短い音型やリズムを反復し、微細な変化で構成する音楽。

ジブリなどの映画音楽
将来はクラシックに
ジブリの作品をはじめ、映画音楽と呼ばれる作品群は50年後、100年後におそらくクラシックとして認識されているはず。映画音楽はクラシックのロマン派から自然に拡張した音楽だと考えているので、ジャンルを分けないほうが僕にとっては自然なことです。
2025年9月にジブリパークの隣で開催したコンサートではクラシックとジブリの楽曲、どちらも同列に演奏する試みも行いました。これからもジャンルの垣根を越えた取り組みをしていきたいです。
角野隼斗(ピアニスト)
1995年、千葉県出身。2018年、ピティナ特級グランプリを受賞、21年、ショパン国際ピアノコンクールにてセミファイナリストに進出。YouTubeではCateen(かてぃん)として活動し、スタジオジブリ作品の楽曲も投稿。トリビュートアルバム「ジブリをうたう」(23年)に「人生のメリーゴーランド」で参加。26年1月末には新譜を発売予定。
10月18日(土)放送の「with MUSIC」に出演!
<番組情報>
with MUSIC(日本テレビ系)
10月18日(土) 22:00~22:54放送
MC:有働由美子さん、松下洸平さん
角野隼斗さんに「地球屋」「ハウルの城」のピアノを弾いていただきました!